本記事では、画像生成AIで使える背景のぼかしテクニックを、パターン別に紹介します。背景全体をふんわりぼかす基本方法から、被写界深度を活かした自然な奥行き演出、光源を幻想的にぼかすテクニックまで幅広く網羅して解説します。
今回は基本的な背景をぼかすプロンプトに加えて、マクロ撮影風の超浅被写界深度やミニチュア風のチルトシフト効果など、少し応用的なぼかし方もまとめています。イラストに合わせたぼかし表現を取り入れたいときに、すぐ活用できる内容にしています。
画像生成AIで背景をぼかす基本テクニック4選
背景全体をふんわりぼかす(バストアップ構図向け)

画像生成AIで背景をぼかしたい場合は、「background blur」を使用します。これは一番シンプルな背景のぼかし方です。これは背景全体を一括してふわっと均一にぼかしたい時に使います。
主役のキャラクターに注目が集まるテクニックの一つです。シンプルな背景演出です。またキャラに「sharp focus」をつけるのが地味に重要です。以下がプロンプト一式のセットです。
background blur, soft blurred background, character in sharp focus
被写界深度を活かして自然な奥行きぼかしを作る
一括したぼかしではなく、奥行きに従って徐々にぼかしたい場合には、「depth of field」のプロンプトを利用します。

被写界深度は実際に写真を撮る際によく使われる用語です。
キャラにはピントを合わせつつ、中景~背景に向かって「徐々に」ぼかしていく本物の写真みたいな自然な奥行きを出します。キャラ→中景→背景と段階的にボケる感じを出したい場合、これが基本になります。
プロンプトは以下の一式セットを利用すると再現できます。
depth of field, shallow depth of field, background gradually blurred, sharp focus on character
光源を幻想的にぼかす(夜景・ランプ表現)

「bokeh(ボケ)」のプロンプトを利用すると、夜景、ランプ、光の粒などが、ふわっと丸くボケる再現ができます。「dreamy atmosphere」を加えると「やわらかく幻想的な」印象になりやすいです。
主に夜景で使うプロンプトで、ドラマチックな雰囲気を演出できます。
bokeh lights, blurry light particles, dreamy atmosphere, soft blurred background

光源ボケは、カメラの場合は被写界深度を浅く設定して撮ることで実現するものです。画像AIならファンタジー世界の魔法の軌跡を光源ボケなどを使って演出することもできます。このあたりはAIイラストの醍醐味ですね。
三層構成で奥行き感を強調するぼかし演出

ぼかしを前景と背景に入れて立体感を出すテクニックです。
「three-layer composition」(三層構成)を指定すると、イラストの手前(前景)と奥(背景)に自然なぼかしを入れることができます。プロンプト内で「blurred foreground」(ぼかした前景)と「blurred background」(ぼかした背景)を明示すると、キャラクターだけにピントを合わせた立体的な構成になりやすいです。
空間に奥行きが生まれ、イラスト全体のストーリー性や臨場感を高めることができます。
three-layer composition, blurred foreground, blurred background, sharp character in focus
マクロ撮影風に背景をぼかす超浅被写界深度プロンプト
マクロ撮影の超浅被写界深度では、ごく近い距離にある一部分だけにピントを合わせ、それ以外を大きくぼかす表現を狙います。これもAIで再現できるようになっています。ほんとすごい‥。

「macro shot
」や「extreme shallow depth of field
」など複数プロンプトを組み合わせて実現します。
マクロ撮影の超浅被写界深度では、ごく近い距離にある一部分だけにピントを合わせ、それ以外を大きくぼかす表現を狙います。AIイラストの場合は、たとえばキャラクターの瞳だけをシャープに描き、輪郭や耳、髪の毛などはふわっととろけるようにぼかすイメージです。
正面からのバストアップ構図で、顔を大きくクローズアップすると再現しやすくなります。
macro shot, extreme shallow depth of field (f/1.2 equivalent), sharp eyes, blurred facial edges
背景のぼかし方については、写真の撮影テクニックをそのままプロンプト化する考え方が、一番うまくいきやすく、再現性も高くなると感じています。
特に、被写界深度を極端に浅くしてポートレートを撮影する手法では、瞳(正確にはまつ毛)にピントを合わせ、それ以外の部分をとろけるようにぼかします。
このような超浅い被写界深度では、ピントが合っている瞳から少しでも奥行きのある箇所、たとえば顔の輪郭、耳、肩、髪の毛の外縁部分などがすでにぼけ始めます。これによって、とろけるような透明感のあるポートレートを作ることができ、このイメージをAI画像で再現しようとしたのが今回のプロンプトです。

プロンプト内には「ultra-shallow depth of field (f/1.2 equivalent)」という表現を入れていますが、「f/1.2 equivalent」の部分がカメラ撮影時の設定値にあたります。
もしぼけが強すぎると感じた場合は、この記述を削除するか、数値を1.2から2.8あたりに変更することで、ぼけ具合をほどよく調整することができます。
ちなみに、このテクニックは写真撮影で実践しようとすると、実はかなり難易度が高い方法です。
ピントが合う範囲が極端に浅いため、たとえば撮影の瞬間にモデルさんがわずかに動いたり、カメラが少しでもズレたりすると、すぐにピントが瞳から外れてしまい、失敗につながります。
プロの撮影現場では、ディスプレイを拡大表示モードにして瞳部分を大きく映し出し、細かくピントを確認しながら、慎重にシャッターを切るといった対応が取られています。
背景演出に使える写真テクニック応用例
動きの軌跡を描写する動体ぼけ(Motion Blur)
被写体や背景にスピード感・動きを持たせるためにぼかすために使用します。

モーションブラー「motion blur」は有名なぼかし方の手法のひとつです。基本的にはキャラクターの動きの軌跡を表現するために、キャラクターの動作がながれるようにぼけるのが本来の基本です。ただ大体は背景にもモーションブラーの効果が乗ることが多く、背景にも動きがでます。
背景だけを流すようにしたい場合は、「dynamic background motion」などの表現を組み合わせるとより効果的です。
motion blur, dynamic motion effect, speed lines, blurred movement
被写体をシャープに、背景だけ流す流し撮り(Panning)
被写体をシャープに保ったまま、背景だけを流れるようにぼかすテクニックです。よくF1レースやバイクレースなどの写真で見るものです。被写体だけがピタッととまり、背景が大胆に流れます。

「panning shot」を指定すると、動いている被写体をシャープに写しながら、背景だけを流れるようにぼかした表現を狙えます。
特に、車やバイクなどの乗り物、走っているキャラクター、スプリント動作などスピード感を強調したいシーンに向いています。
モーションブラーと違って、被写体自体はくっきりとしたまま背景だけが流れるので、動きと存在感を両立させたいときに便利な手法です。
panning shot, sharp subject, blurred background motion, dynamic scene
motion blurとpanningの使い分けポイント
観点 | motion blur | panning shot |
---|---|---|
何をブラーさせるか | 動いている被写体そのものをブラーさせる | 背景だけを流して、被写体はくっきり保つ |
被写体の見え方 | 少しぼける(動きの方向に引き延ばされた表現になる) | はっきりシャープに描写される |
背景の見え方 | 背景も少し流れることがある(AIでは多少混ざる) | 背景だけがきれいに横方向に流れる |
適したシーン | – 全身で激しく動いているシーン(例:ダッシュ、ジャンプ) – ぶれ感で躍動感を演出したい場合 | – 走っているキャラ – スポーツ、乗り物などスピード表現を重視する場合 |
プロンプト例 | motion blur, dynamic motion effect, blurred movement | panning shot, sharp subject, blurred background motion |
注意点 | 被写体がブレすぎるとイラストの完成度が落ちることもある | 背景だけを流す設定がうまく効かないと、静止感が強くなることがある |
動き表現に適したぼかし方の選び方
目的 | 使うべきテクニック |
---|---|
被写体にダイナミックな動きと残像を出したい | motion blur |
被写体はくっきり見せつつスピード感を出したい | panning shot |
背景全体をやわらかく演出するソフトフォーカス効果
背景や全体のディテールを柔らかくぼかし、ふんわりとした優しい雰囲気を演出できます。鮮明な描写ではなく、あえて少し甘さや夢のような質感を持たせたいときに使います。

「soft focus effect」を使用します。ソフトフォーカス効果は、イラスト全体をふんわりとやわらかい印象にするためのテクニックです。
はっきりとシャープな描写ではなく、あえて少し甘く、ぼかしたような雰囲気に仕上げることができます。背景だけでなく、キャラクターや空気感も一緒にやわらかく見せたいときに向いています。
プロンプトでは「soft focus effect」を入れると自然なふんわり感が出しやすくなります。
さらに「dreamy soft lighting」や「gentle blurred details」を加えると、光や細かい部分までやさしくぼかすことができます。イラスト全体に透明感を出したいときや、夢のようなやわらかい雰囲気に仕上げたいときに使いやすい効果です。
soft focus effect, dreamy soft lighting, gentle blurred details, subtle glow

儚い演出も「soft focus effect」でこのように再現できます。
画面全体にピントを合わせた後の部分ぼかしテクニック
個人的に地味のおすすめでよく使っているのがこのプロンプトです。元は画面全体にピントが合った状態(パンフォーカス)から、特定のエリアだけを意図的にぼかし、主役を際立たせるためのものです。

パンフォーカスからの部分ぼけは、もともと画面全体にピントが合っている状態から、特定のエリアだけをぼかして演出する方法です。
主にキャラクターやメインの被写体を際立たせたいときに使われるテクニックで、背景の中でも目立たせたくない部分をさりげなくぼかすことで、視線を自然に誘導することができます。
この方法をおすすめできる理由は、キャラクター周辺の限られた範囲(おおよそ1〜3メートル程度)がシャープに保たれ、それ以外が自然にぼけるためです。
これにより、この記事の前半で紹介した「被写界深度的自然ボケ(奥にいくほどボケる)」に近い効果を再現できる点にあります。
もしAIの生成結果でうまく自然な被写界深度ボケが再現できない場合でも、この手法を使えば、キャラクターの周囲以外をぼかすことで、奥行きに向かって徐々にぼけていくような雰囲気を擬似的に作り出すことができます。
プロンプトでは「selective blur」を使うことで、全体を均一にぼかすのではなく、ぼかす場所を限定したニュアンスを伝えることができます。あわせて「sharp character」を指定することで、キャラクター本体はシャープに保ちつつ、背景の一部だけを軽くぼかす効果を強めることができます。
背景全体を強くぼかしてしまうと不自然になることがあるため、「slightly blurred background elements」のように、あくまで控えめにぼかす指示を加えるのがポイントです。
selective blur, sharp character, slightly blurred background elements
ミニチュア風に背景を演出するチルトシフト効果
チルトシフト効果は、写真やイラストの中央部分だけにピントを合わせて、上下をぼかすことで、まるでミニチュア模型のような見た目に仕上げる演出方法です。

普通の街並みや広い風景を、縮小された世界のように見せたいときに使われることが多いです。
これはかなり前に写真界隈のSNSで一時話題になりました。写真の中央だけシャープでそれ以外をPhotoshopで加工してぼかすことで、写真なのにミニチュアのジオラマ模型のような雰囲気になります。それが面白くて一時期話題になって結構流行ったものです。
今回はそれをAI画像で再現したものになります。
プロンプトでは「tilt-shift effect」や「miniature-like appearance」を使うと、ミニチュア風の描写を狙うことができます。
さらに「blurred top and bottom」を加えることで、画面の上と下をぼかして、中央にだけピントを集めるニュアンスを伝えやすくなります。
この効果は、俯瞰視点の構図と相性が良く、遠くから街や校庭を見下ろすようなシーンで特にきれいに決まります
tilt-shift effect, miniature-like appearance, selective blur, blurred top and bottom
まとめ|AIで再現するさまざまな背景のぼかしテクニック
背景をぼかすテクニックは、カメラによる写真撮影で使われる被写界深度の効果や、もともと絵画の世界で立体感を表現するために生み出された手法など、さまざまなルーツを持っています。
この記事では、背景全体をふわっとぼかす基本的な方法から、被写界深度を活かした自然な奥行き表現、夜景や光源を幻想的にぼかす演出、前景・中景・背景を使った三層構成による空間演出まで、幅広いぼかし方をAIで再現するためのプロンプトを紹介しました。
さらに、玉ボケや動体ぼけ、流し撮り、マクロ撮影風の超浅被写界深度、そしてチルトシフト効果のような少し特殊なテクニックにも触れ、それぞれの特徴や使いどころについて整理しました。
AIで背景ぼかしを再現する場合でも、こうした写真やアートの基本的な考え方を応用すると、より自然で完成度の高いイラストに仕上げることができます。
目的にあわせたテクニックを選びながら、理想に近い背景表現を楽しんでみてください
なお以下記事にて、背景に様々なエフェクト効果を与えるためのプロンプトを紹介しています。ぜひご活用ください。
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