AIに歴代アメリカ大統領の演説を分析させたら、面白すぎた
「AIに歴代アメリカ大統領のスピーチを分析させたら、面白すぎた」の第2回です。
アメリカの大統領って、演説でどんな言葉をよく使うんでしょう?
気になったので、AIを使って調べてみました。いわゆるテキストマイニングです。
やり方は、ざっくりこんな感じ。
- 歴代アメリカ大統領(46代まで)のスピーチデータを収集
(就任演説、一般教書演説、外交声明など、公式スピーチをチェック) - ジョージ・ワシントンからジョー・バイデンまで、200年以上のデータを網羅
- AIで単語を抽出し、頻出回数をカウント
- 「理念・経済・外交・安全保障」などのカテゴリに分けて分析
- さらに、時代ごとのキーワードの変遷を可視化
そして最後に、
「思想の変遷」をデータから読み解きます。
その結果、「理念的なキーワード」と「経済に関するキーワード」に、ある法則が見えてきました。
時代によって、言葉の使われ方がどう変わるのか?
そこに2つの大きな発見があったんです。
今回は、「外交や安全保障のキーワード」に注目します。
歴代アメリカ大統領は、どんな言葉を使って国際情勢に向き合ってきたのか?
戦争のときは「平和」を語り、平和のときは「戦略」を語る。そんなパターンがあるのかもです。
時代によって変わる外交メッセージ。その変遷を、データで見ていきます。

それでは、「外交や安全保障のキーワード」について見ていきます。
【第三の発見】外交や安全保障のキーワードは「乱高下」している!?
本分析では、歴代大統領のスピーチの変遷をもとに、今後の演説の傾向を仮説的に推測 しました。ただし、これは 統計的因果関係を示すものではなく、あくまで相関関係に基づく考察 であり、未来のスピーチが必ずしもこの傾向をなぞるとは限りません。
「戦争の時は”平和”を語り、平和な時は”外交”を語る」?
外交や安全保障に関する発言は、常に一定ではなく、乱高下している ことがAIの分析で判明しました。
これは一見、「戦争が起こると安全保障の話が増え、平和な時代は減る」から当然のように思えます。
しかし、データを詳しく見てみると、意外な法則 が浮かび上がってきました。

各大統領(1代目~46代目)における「安全保障・防衛を示すキーワード」(例:「安全保障」「防衛」「テロ」「危機」など)の総出現頻度の変化を示す折れ線グラフ
では、冷戦期と現代を比較して、外交や安全保障の発言の変化を見てみましょう。
冷戦期 vs. 現代 → 安全保障の発言傾向はどう変わったのか?
AIの分析によると、外交や安全保障の話題は 時代ごとに異なる特徴を持っている ことが分かりました。
1️⃣ 冷戦期(1945~1991年)
- 「核抑止」「防衛」「自由世界」「共産主義の脅威」 といった言葉が頻出
- 米ソ対立の真っ只中であり、安全保障が最大の関心事だった
- 例: 「鉄のカーテン」「ミサイル防衛」「軍拡競争」 などのキーワードが増加
2️⃣ ポスト冷戦期(1991~2001年)
- 「グローバル外交」「経済的連携」「多国間協力」 などの言葉が増える
- 冷戦が終結し、軍事よりも経済的な影響力が重視されるようになる
- 例: 「NATO拡大」「貿易協定」「新世界秩序」 などのキーワードが増加
3️⃣ 9.11以降の戦争(2001~2021年)
- 「テロとの戦い」「国際安全保障」「報復」「対策」 などの言葉が急増
- 戦争(アフガニスタン・イラク戦争)の影響で、防衛・軍事の話題が増える
- 例: 「パトリオット法」「同盟国」「国防戦略」 などのキーワードが頻繁に登場
4️⃣ 現代(バイデン政権)
- 「気候安全保障」「サイバー戦争」「経済制裁」「多国間協力」 などの新しいテーマが出現
- 軍事そのものよりも、技術戦争や経済制裁が外交の主要テーマ になりつつある
- 例: 「AI戦略」「エネルギー安全保障」「半導体供給」 などの言葉が登場
アメリカが「軍事」を語る時と「外交」を語る時、その違いとは?
もう一つ興味深いのは、軍事的な話が増える時期と、外交的な話が増える時期が交互に訪れている という点です。

各大統領(1代目~46代目)における「外交・国際関係を示すキーワード」(例:「外交」「国際主義」「封じ込め政策」など)の総出現頻度の変化を示す折れ線グラフ
- 軍事的な話が増える時期
→ 実際に戦争や軍事衝突が発生しているタイミング
→ 例: 第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争 - 外交的な話が増える時期
→ 戦争が終結し、和平交渉や外交戦略が進むタイミング
→ 例: 国連の創設(1945)、デタント(1970年代)、冷戦終結(1991)
この流れを見ると、アメリカの政治は 「戦争 → 和平 → 再び緊張」 のサイクルを繰り返しているように見えます。
つまり、大統領の発言内容を分析することで、「次にアメリカが戦争をする可能性」 を予測するヒントになるかもしれません。
結論 → 「戦争の話題が増えたときは、逆に平和の兆し?」
AIの分析で明らかになったのは、戦争の話が増えたときは、むしろ「和平の準備」が進んでいる可能性がある ということ。
戦争が続くと、人々は平和を求めるようになり、大統領も「和平」「和解」といったキーワードを多用するようになる。
逆に、平和な時代には「外交戦略」「安全保障」が語られ、次の国際関係の変化に備える動きが見られる傾向があります。
この視点を持ってニュースを見れば、「外交発言の増加 = 国際関係の変化を見据えた動き」なのか、「軍事発言の増加 = 平和構築の準備」なのか を考える手がかりになるかもしれません。
次の章では、「意外な単語が、時代とともにどのように変遷したのか?」 を深掘りしていきます!
「一部の大統領しか使っていないキーワード」を分析してみた
大統領の中には「その人しか使わない言葉」がある!?
歴代アメリカ大統領のスピーチをAIで分析したところ、「特定の時代」ではなく、「個々の大統領の特徴」から生まれた独自のキーワード が存在することが分かりました。
つまり、「この言葉を使ったのは、歴代大統領の中でこの1人だけ!」という単語がある ということです。
たとえば…
こうした「固有キーワード」 は、大統領の個性やその時代の特徴を浮き彫りにする面白いポイントです。

グループ1:汎用的・頻出的キーワード
定義: 大統領がその職務上、時代背景から必然的に使用すると考えられる単語。
例:「liberty(自由)」、「unity(団結)」、「economy(経済)」、「progress(進歩)」、「duty(義務)」、「independence(独立)」など
グループ2:特異・変化を示すキーワード
定義: 時代背景や職務の必然性からは外れるが、各大統領が独自の視点や政策、個人的な特徴を反映して使用した単語。
例:「populism(民衆主義)」、「manifest destiny(明白なる運命)」、「innovation(革新)」、「states’ rights(州の権利)」、「containment(封じ込め)」、「tradition(伝統)」など
では、固有キーワードとは具体的に何なのか、さらに深掘りしてみましょう。
例:「民衆主義(populism)」を使ったのはアンドリュー・ジャクソンだけ?
アンドリュー・ジャクソン(第7代大統領)は、「民衆主義(populism)」を強調した唯一の大統領でした。
彼は、エリート層の政治に対抗し、「民衆のための政治」 を掲げたことで有名です。
しかし、興味深いのは、「populism」という言葉自体は、後の大統領が使っていない こと。
✅ ジャクソンの時代:「民衆の声を反映する政治」 をスローガンにした
✅ その後の大統領:同じような理念を持っていても、「populism」という言葉は避けた
歴代大統領における「populism」の出現回数
大統領 | Populismの使用回数 |
---|---|
アンドリュー・ジャクソン | 23回 |
それ以降の大統領 | 0回 |
なぜ後の大統領は「populism」を使わなかったのでしょうか?
その理由は、「民衆主義」という言葉が、時代が進むにつれ、政治的に微妙な意味合いを持つようになったから です。
- 19世紀 → 「民衆のための政治」というポジティブな意味
- 20世紀 → 「大衆扇動(demagoguery)」というネガティブな意味も含むようになる
- 現代 → ほとんどの大統領が避けるワードに
特定の時代ではなく、「大統領個人のクセ」で現れるキーワードとは?
他にも、大統領によって「この人だけが使った!」という単語がいくつか見つかりました。
1️⃣ 「新しい契約(New Deal)」 → フランクリン・ルーズベルト
- 1930年代の大恐慌対策のため、FDRが提唱した経済政策
- 他の大統領は類似の政策を打ち出しても、「New Deal」というフレーズは使用しなかった
2️⃣ 「スターウォーズ防衛構想(Star Wars defense initiative)」 → ロナルド・レーガン
- レーガンが冷戦期に提唱したミサイル防衛構想
- 他の大統領は「ミサイル防衛」という表現を使ったが、「Star Wars defense initiative」という言葉は彼だけのもの
3️⃣ 「オサマ・ビン・ラディン」 → バラク・オバマ
- 9.11以降の対テロ戦争で、ビン・ラディン殺害の作戦を指揮したオバマは、この名前を演説で頻繁に使用
- 他の大統領は「テロリズム」「アルカイダ」といった一般的な表現を使い、特定の人物名は避けた
このように、「固有キーワード」は、政策や外交方針、時代の影響だけでなく、大統領の話し方や思想そのものを反映する ことがわかります。
結論 → 固有キーワードは「時代背景」と「個性」の両方を映す
AIによる分析で分かったのは、「ある時代だけに使われた言葉」ではなく、「ある大統領だけが使った言葉」 という分類ができることです。
- 「時代背景に関係なく、個人のクセで選ばれる単語」
- 例: 「populism(民衆主義)」ジャクソン
- 例: 「New Deal(新しい契約)」フランクリン・ルーズベルト
- 例: 「Star Wars defense initiative(スターウォーズ防衛構想)」レーガン
- 「時代の流れとともに消えた単語」
- 例: 「iron curtain(鉄のカーテン)」トルーマン(冷戦初期に限定)
- 例: 「terrorist hunting(テロリスト狩り)」ブッシュ(9.11以降のみに集中)
- 「大統領自身の個性を反映する言葉」
- 例: 「Yes We Can」オバマ
- 例: 「Make America Great Again」トランプ
こうした言葉を分析することで、単なる政治スローガンの違いだけでなく、「大統領の思想の違い」 を浮き彫りにすることができます。
【最終結論】AIが明かす「アメリカ大統領の思想変遷の法則」
ここまでAIによるテキストマイニングを通じて、歴代アメリカ大統領の言葉の使い方を分析してきました。
その結果、「時代による変化」と「個々の大統領の特徴」 が、発言内容に大きく影響していることが明らかになりました。
では、これまでの発見を振り返り、「アメリカ大統領の思想の進化」 を総括していきましょう。

理念の話は減っているのか? → ある時期を境に安定する
アメリカ建国期(18世紀後半〜19世紀初頭)では、
✅ 「自由」「平等」「共和国」「独立」 などの「理念的キーワード」が頻繁に使われていました。
しかし、第21代大統領(チェスター・アーサー)以降になると、「理念的な話」は急激に減少し、安定する 傾向が見られました。
なぜでしょうか?
➡ 建国期には「国の土台」を作る必要があったため、「理念」が中心的なテーマだった。
➡ しかし、国が成熟すると、「理念」は当然のものとなり、議論の中心は「政策」へと移った。
➡ 結果的に、現代では「理念的な話」はスピーチの一部を占めるものの、頻繁に繰り返されるものではなくなった。
経済キーワードの周期的な増減は、国のリズムと一致している?
経済に関する発言を分析すると、興味深い「周期的な増減パターン」 が見られました。
具体的には…
これは、「アメリカ経済は一定のリズムで政策のテコ入れが必要になる」ことを示しているのかもしれません。
例えば、
「自由な言葉」と「義務感からの言葉」はどう変化したのか?
さらに、分析を深めると、
大統領が使う言葉には、「自由に選んだ言葉」と「義務感から使わざるを得ない言葉」 があることが分かりました。
✅ 「自由な言葉」 → 各大統領の個性が反映された固有キーワード
例:「Yes We Can」(オバマ)、「America First」(トランプ)、「New Deal」(FDR)
✅ 「義務感からの言葉」 → その時代の課題に応じて、避けられない単語
例:「戦争」(冷戦期の大統領)、「テロ」(9.11以降の大統領)、「気候変動」(21世紀の大統領)
AIで見えてきた「歴代アメリカ大統領の言葉の進化」とは?
今回のAI分析から、アメリカ大統領の思想変遷には一定の法則 があることが分かりました。
この結果を踏まえると、今後の大統領のスピーチから、「アメリカが次に向かう方向」 を予測できるかもしれません。
たとえば…
AIが読み解く歴代大統領の言葉から、
「アメリカがどこへ向かおうとしているのか?」を予測するヒントが見えてきました。
まとめ → 「言葉の変化は、歴史の変化そのもの」
言葉には、その時代の空気が映ります。
アメリカ大統領のスピーチも、まさにそんな感じかもしれません。
AIで分析してみると、時代によってよく使われる言葉がガラッと変わっていました。
建国期は「自由」や「独立」が強調され、国が落ち着くと理念の話は減る。でも、冷戦期にはまた復活。
経済の話も不景気や回復のタイミングで増減していて、まるで景気の波そのもの。
外交や安全保障の言葉は、戦争や国際情勢の変化に応じて大きく動く。
こういう話、大きな歴史の流れって感じがしますよね。
でも、もっと身近な視点で考えると、大統領がどんな言葉を選ぶかって、その時の国民の空気にも影響されているのかもです。
例えば、「タイパ」とか「推し」とか今の自分たちが何気なくSNSで使っている言葉も、10年後には「昔はこんな表現が流行ってたんだ」なんて分析されるかもしれません。
そう思うと、言葉って単なるツールじゃなく、時代をつくるものなんだなと感じます。
スピーチの言葉を追うだけで、歴史の変化が見えてくるのは面白いです。
大統領たちは、その時代に何を伝えたかったのか? どんな未来を描こうとしたのか?
そんな視点で見てみると、意外な発見があるかもしれません。
AIのテキストマイニング、まだまだ色々試してみたくなりますね。
次回も面白いテーマを探していきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
調査内容の補足
今回のプロジェクトでは、まず歴代アメリカ大統領(1代目~46代目)の公式スピーチ(就任演説、一般教書演説、外交声明など)を収集しました。その後、AIを活用したテキストマイニング手法で、各スピーチから頻出するキーワードを抽出し、以下のようなカテゴリーに分類しました。
- 理念的キーワード: 「自由」「独立」「民主主義」など、国の基本理念や価値観を表す単語
- 経済的キーワード: 「経済」「繁栄」「進歩」など、経済政策や産業発展に関連する単語
- 外交的・国際関係キーワード: 「外交」「同盟」「国際協力」など、国際関係に関する単語
- 安全保障・防衛キーワード: 「防衛」「安全保障」「戦略」など、国の安全を守るための単語
さらに、一部の大統領しか使わなかった固有キーワードも抽出し、個々の大統領の独自性や政治的個性がどのように反映されているかを分析しました。
これらのデータを時系列で可視化するために、折れ線グラフを作成し、各時代ごとの変遷や周期性を明らかにしました。結果として、各大統領がどのようなメッセージを発信していたのか、またその発言の背景にある時代的要請や個人の政治スタイルが客観的に読み取れるようになりました。
この手法により、単なる印象論ではなく、具体的な数値データを基に歴代大統領の思想変遷を理解することができ、今後の政治や政策の動向を予測するための一助となると考えています。
本調査では、以下の公的データベース・アーカイブを活用し、歴代アメリカ大統領の公式スピーチを収集しました。
- アメリカ国立公文書館(NARA): Presidential Library(大統領図書館)より取得
- ホワイトハウス公式サイト: 現職大統領のスピーチを取得
- American Presidency Project(カリフォルニア大学サンタバーバラ校): 歴代大統領の演説アーカイブ
収集したスピーチの範囲は、以下の3カテゴリに分類されます。
- 就任演説(例:リンカーンの1861年就任演説)
- 一般教書演説(例:フランクリン・ルーズベルトの1941年「四つの自由」演説)
- 外交声明・戦争宣言(例:ブッシュの「9.11後の演説」)
データ取得期間: 1789年(ジョージ・ワシントン)~2025年(ジョー・バイデン)
総スピーチ数: 約1200件
総単語数: 約1500万語
本調査では、AIを用いたテキストマイニング手法を活用し、歴代アメリカ大統領のスピーチを分析しました。しかし、以下のような限界や留意点があることを考慮する必要があります。
1. 文脈の理解には限界がある
本分析は単語やフレーズの頻度を基に傾向を抽出していますが、文脈全体を把握するわけではありません。
例えば、「自由(liberty)」という言葉が使われた場合、それが個人の権利を擁護する意味なのか、軍事的な介入を正当化する意味なのかは、文脈によって異なります。
したがって、本調査の結果は、単語単体の傾向として捉え、解釈には慎重さが求められます。
2. スピーチの意図や聴衆の受け取り方は分析対象外
大統領のスピーチは、その時々の政治戦略や聴衆の感情を踏まえて作られます。
例えば、選挙演説と就任演説では語られる内容のトーンが大きく異なることが一般的です。
本調査ではスピーチの内容をデータとして分析していますが、「誰に向けて語られたか」や「当時の聴衆がどのように受け止めたか」といった要素は考慮できていません。
そのため、スピーチが持つ本来のニュアンスを100%反映できているわけではない点に留意が必要です。
3. データのバイアスについて
歴代アメリカ大統領のスピーチはすべてが記録・公開されているわけではなく、**データの偏り(バイアス)**が発生する可能性があります。
特に、19世紀以前のスピーチは現在のように詳細な記録が残っていないため、データの不均衡が生じる場合があります。
また、公式スピーチ以外にも、大統領の非公式な発言や討論会の内容が影響を与えることもありますが、それらは本調査には含まれていません。
4. AIの解析結果は統計的な示唆であり、絶対的な結論ではない
本調査の結果は、AIによる言語解析に基づくものであり、統計的な相関関係を示唆するものです。
したがって、「ある単語が増えたから必ず特定の現象が起こる」といった因果関係を示すものではありません。
あくまで、「過去のデータに基づく傾向の分析」であり、未来を正確に予測するものではないことに注意が必要です。
参考文献・データソース
- American Presidency Project: https://www.presidency.ucsb.edu/
- National Archives and Records Administration (NARA): https://www.archives.gov/
- The White House Archives: https://www.whitehouse.gov/
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